がんは、昭和56(1981)年以来わが国における死亡原因の1位であり、今や2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなる時代になりました。患者さんも年々増加の一途にあるところから、がん対策の強化を望む声が国民的な運動へと拡大し、超党派の議員立法として平成18(2006)年「がん対策基本法」が成立し、平成19(2007)年から施行されました。また、本法律に基づき、がん患者を含めた国民の視点に立って、「がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会の実現を目指す」ために、同年に「がん対策推進基本計画」が策定されています。
「がん対策基本法」の基本理念である、がん医療水準の均てん化を推進する観点から、全国各地で「がん診療連携拠点病院」の指定が行われています。兵庫県では、平成21年4月の時点ですでに14病院が国指定の「がん診療連携拠点病院」の指定を受け、これらの病院や患者会、県医師会などの各種団体が協力して「兵庫県がん診療連携協議会」(以下、協議会)を組織しています。
また、県内での更なるがん医療水準の向上を図ることを目的として、「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」制度を創設し、「がん拠点病院に準じる病院」として30の専門的ながん診療の機能を有する医療機関を指定しています。さらに、一般病院、診療所などの地域の医療機関と連携して、県内のどこでも安心かつ安全で質の高いがん医療が受けられるような体制を構築中です。
がん対策推進基本計画も当初の策定から5年が経過し、新たな課題も明らかになっていることから、平成24(2012)年6月に改定され、がん対策は次の第2段階に入りました。重点的に取り組むべき課題として、チーム医療の推進やがんと診断された時からの全人的な緩和ケアなどが受けられるように追加されました。
協議会では、がん診療連携拠点病院の機能として求められている、がん診療上の要件についての4部会とがんの地域連携パスWGを設置し、それぞれ検討会やセミナーを開催して、研修と情報交換を行っています。現在までに、外来化学療法、放射線治療、薬剤師セミナー、がん登録、などをテーマとして多くの参加者を集めて研修会が行われてきました。さらに、がん医療に携わるすべての医師を対象とした緩和ケア研修会も多数開催し、現在までに約1,800名の研修が修了しました。今後も県内各地で多数の研修会やセミナーを開催する予定です。協議会では、医師、看護師、薬剤師ほかの全医療スタッフがチームを組んで、患者さんの目線に立った最良のがん医療を行うよう心がけています。
がん診療連携拠点病院のもっとも大きな役割は、各地域での円滑な連携診療です。各拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」や「地域医療連携室」を通して、近隣の病院や診療所との連携を密にし、がん患者さんの回復と社会復帰を支援しなければなりません。協議会を通して地域連携に必要な情報を共有し合い、県内のどこでも、がん患者さんが安心して納得の行く治療を受けられるよう努力して参ります。
このホームページでは、兵庫県がん診療連携拠点病院の概要や協議会の活動を紹介し、皆様のお役に立つ"がん"に関する医療情報なども提供したいと思っています。多くの皆様に、このホームページが利用されることを願っています。
今後とも皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
平成30年4月
兵庫県がん診療連携協議会 議長(兵庫県立がんセンター 院長)
吉村 雅裕