兵庫県がん診療連携協議会
文字の大きさ大標準
お問い合わせ トップページ

第20回 兵庫県がん診療連携協議会 議事録 令和7年4月17日(木)Web開催

  第20回兵庫県がん診療連携協議会(以下、協議会)が令和7年4月17日(木)にWeb開催された。兵庫県内の国指定がん診療連携拠点病院、がん診療病院、小児がん拠点病院及び関係団体の代表者等、委員28名のうち、代理出席を含めて28名全員が出席した。

(1)前回協議会及び幹事会議事録の確認

 昨年4月11日開催の第19回協議会6月6日の第1回幹事会、今年2月13日開催の第2回幹事会の議事録は、本協議会のホームページに掲載されているので確認いただきたい。今回も、議事録はHPに掲載を予定しているので了承願いたい。

(2)がん対策について (資料2/PDF: 910KB

①兵庫県内のがん診療連携拠点病院等の指定状況等
 がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針に基づいて、がん患者等がその居住する地域にかかわらず、等しくそのがんの状態に応じた適切ながん医療や支援等を受けることができるように整備を進めてきた。令和7年4月1日現在、「国指定のがん圏域1圏域に対して1か所は整備する」となっているところ、がん圏域10に対して18の拠点病院がある。地域拠点病院がないがん圏域にある丹波医療センターは県立がんセンターと連携、赤穂市民病院は加古川中央市民病院との連携を前提に、グループとして指定した地域がん診療病院を1施設ずつ整備できるよう取り組んでいる。県指定病院は6病院と昨年の4月から2施設減っている。西宮市立中央病院が経過措置で2年経過し、県立西宮病院との統合前提で、「日本医療機能評価機構の審査を受けていない」、「放射線治療医を配置できていない」などの点から指定から外れている。西脇市立西脇病院に関しては院内がん患者登録数、放射線治療、2年間の経過で判断令和7年4月に指定から外れた。
 2ページ目には、がんの先進的医療に特化した治療を提供している医療機関として3か所、がんゲノム医療拠点病院として2か所、がんゲノム医療連携病院として8か所記載しているがこちらは変更なしである。小児がん拠点病院は県立こども病院でこちらも変更はない。

②令和7年度当初予算
 前年度に対して大きな変更はない。がんに関する各施策をがん対策の柱に沿って分類しているが、がん予防推進の1つ目の箱、生活習慣の改善の中で、データおよびICTツール活用した市町健康づくり支援は前年度10,175,000円から19,500,000円に増加、健診データを用いた健康状態の把握などの事業で市町に対する人材派遣を追加している。
 早期発見推進の1つ目、「健診機会の確保と受診環境整備」の中で、集団検診車整備事業を昨年72,058円計上していたが、数年に1回の整備なので今年度は該当ではないのでゼロである。「個別がん対策推進」の中で下から2つ目の粒子線治療貸付、「がん患者の療養生活の質の維持向上」の中の在宅看護強化事業は、去年より金額が落ちているが実績に合わせた減額になっている。同じ「がん患者の療養生活の質の維持向上」中で(新)24時間対応在宅介護サービス参入促進事業に関しては既存事業の看護小規模在宅サービスを新規事業として整備したもの、事業委託料となる。

③がん診療拠点病院の指定要件に関するアンケート調査結果
 調査目的は、がん対策基本計画において、「国及び都道府県は、がん医療が高度化する中で、引き続き質の高いがん医療を提供するため、地域の実情に応じ、均てん化を推進するとともに、持続可能ながん医療の提供に向け、拠点病院等の役割分担を踏まえた集約化を推進する。」とされている。こうしたことを踏まえて、がん診療連携拠点病院の現状・課題を把握するため国及び県がん拠点病院に対してアンケートを実施した。調査対象は国、県がん診療連携拠点病院となる。うち1病院を除く25病院から回答を得た調査内容は診療実績、診療従事者確保の困難の有無について次回の更新予定である令和9年3月ごろを予想してお答えいただいた。

 ・国指定がん診療連携拠点病院18病院の結果:診療実績としては9割の病院で要件を満たすことが困難な項目はないとの回答であったが放射線治療延べ患者数に関しては3病院が満たさない予想、意見としても、「機器更新に伴って」、「そもそも患者数を満たすことが難しい」という意見、「手術件数、薬物療法、放射線すべてにおいて患者数要件を満たすことが困難」という意見もある。医師確保でも9割の病院では要件を満たすが、一部で放射線診断医、治療医、精神科医、病理医、緩和ケア医と外科医以外の職種で確保が困難な病院もあり、専従要件を専任に、常勤を非常勤も容認などの緩和措置の希望が意見として出ている。医師以外の医療従事者確保であるが、医師確保に比べるとほぼ問題なさそうではあるが意見にもあるように僻地において人材確保が困難であることがうかがわれる。全体を通しては、回数より質の評価をという意見、非都市部での人材確保が課題という意見がある。

 ・県指定拠点病院の7病院の結果:放射線治療患者数では3施設、薬物治療、手術に関しても基準維持が困難という回答であった。原因としてコロナ以降の患者数減少に加えて医師確保も課題となっている意見がうかがえる。医師確保に関して国指定同様、放射線治療医、薬物療養医、精神科医の確保が困難となっている。医師以外の診療従事者に関してはなんとか工夫をして維持できそうであるという結果であった。県指定拠点病院について集約化の必要性がある領域を尋ねているが1施設以外は「なし」であった。現在の指定要件に関しての妥当性について5施設が妥当、2施設は妥当ではないと回答されており、診療加算はないうえで、研修受講の優先度は下げられることや、治療まで至らない診断能力についても評価されるべきではという意見があった。

  これらを踏まえて方向性としては国の拠点病院については令和10年度予定の指針見直しを注視していくこと、県拠点病院については患者確保、人材確保で困難感がある病院に対してどのような対応が考えられるか、健康づくり審議会対がん戦略部会がん診療連携推進専門委員会で検討することも考えていくこととしている。

(質疑応答)

⇒ 地域性もあって、数年前までは国指定拠点病院だったが、放射線治療医の確保が必要だとか、数件の課題がクリアできなくて肩書が格下げされてしまった。緩和ケアの研修もしているし、国指定の時と変わらない機能は維持してずっとやっている。当院以外でもパワーを持っている病院もある。集約化も必要ではあるが地域の病院も温かい目で見守ってほしい。

⇒ 9割ぐらいが今の要件について妥当との回答であったが、発言者の言う通り地域性をよく考える必要がある。要件を低くして拠点を増やしても増えてほしい地域に増えなくて、逆に阪神間ばかり増えるといった状況も起こるし、地域の事情をよく考えた上での検討が必要。常勤、非常勤の問題、専従専任の問題、放射線治療医・看護師の配置、次回の改訂時に十分考えたいと思う。

⇒ アンケートの中で、放射線治療医と精神科医不足の指摘があったが、緩和ケア部会としては緩和ケア医は配置としてはかなりリスクが高いと思っている。国指定、県指定ともに2年後の更新に向けて問題がないという回答施設が多かったが、実際のところ、緩和ケア医といわれている先生お一人で担当されている施設が半分以上ではと思う。2年後大丈夫という回答でも、病気や異動で人がいなくなる施設は十分あり得るので、緩和ケア医が充足していると思わないようお願いしたい。

(3)幹事会運営要領の改正について(資料3/PDF: 339KB

 国指定拠点病院について、第19回協議会の開催以降指定状況に変更はないため、協議会会則に改正はない。幹事会運営要領については、令和7年3月26日に新たにツカザキ病院が準じる病院に指定、令和7年4月1日をもって、西宮市立中央病院、西脇市立西脇病院が県指定拠点病院から準じる病院に指定されたことに伴う改正がある。なお、運営要領の改正施行日は令和7年4月17日とする。

(4)協議会・幹事会並びに各部会の令和6年度活動報告及び令和7年度活動計画
資料4/PDF: 8,000KB

①「協議会・幹事会」関連
 令和6年4月11日に第19回がん診療連携協議会を開催、6月6日に第1回幹事会、令和7年2月13日に第2回幹事会、10月19日に協議会が主催する兵庫県民がんフォーラムを開催した。今年度の活動は、本日4月17日第20回がん診療連携協議会をWeb開催、第1回の幹事会を6月19日、来年の2月頃に第2回幹事会の開催を予定している。また、11月8日にひょうご県民がんフォーラムを神戸市立医療センター中央市民病院担当で開催を予定している。

②「研修・教育部会」関連
 がん看護コアナース育成セミナーは全3回で「不眠は夜の問題ではない」というテーマで令和6年11月22日、29日が講義、12月6日が事例検討会という形でWeb開催と現地で体験研修を行った。「研修・教育部会セミナー」は、テーマ「消化器外に対するロボット手術の現状と未来」で10月5日に開催、60名が参加した。また、テーマ「直腸がんの診断と治療-update-」で10月12日に放射線セミナーを開催、157名が参加した。12月14日には「見えない敵とどう戦うか~がんと微生物に対する両面作戦~」というテーマで、検査セミナーを開催し94名が参加した。令和7年2月8日にはテーマ「ICIによるirAE・薬剤師外来」で薬剤師セミナーを開催し258名が参加をした。いずれのセミナーもハイブリッドで開催をした。それから、昨年の11月30日にはがん診療連携拠点病院を対象とする「第9回兵庫県がん化学療法チーム医療研修会」を開催、「がん治療における妊孕性温存」というテーマで、13名が参加した。県民がんフォーラムは「がんと診断されたあなたに~患者力を高めるには~」というテーマで131名が参加した。
 今年度は、「がん看護コアナース育成セミナー」は「多様化するがん患者の一人一人の力を信じ、その力を引き出し、高める意思決定支援」というテーマで、11月4日から14日のうち1日で体験研修、11月21日、28日、12月5日で講義事例検討をWeb開催の予定とする。がん診療連携拠点病院を対象とする「第10回兵庫県がん化学療法チーム医療研修会」は秋開催だが、詳細は決まっていない。「研修・教育部会セミナー」は「膵がんの診断と治療の最前線」で10月11日に開催をする。「放射線セミナー」は10月25日「乳がんの診断と治療-update-」というテーマで開催をする。検査セミナーは12月6日または12月13日で調整中、テーマ等は未定である。「薬剤師セミナー」は来年の1月31日と日程は決まっているが、詳細は未定。県民フォーラムに関しては11月8日「ACPに関する内容」で開催とする。
 「研修・教育部会セミナー」のアンケートだが、開催時間帯について平日夕方の希望もあり、検討してもいいのではないか。今後のセミナーの希望としては、肺がん、膀胱がん、婦人科・泌尿器科手術、チーム医療等の提案があった。

③「情報・連携部会」関連
 昨年は業務改善ということで負担軽減のための改革1年目ということになった。まず、全体の部会を4回から2回に削減した。就労支援、PDCAサイクル活動の報告、ピアサポーター支援の活動ということになっている。事務局会議は一昨年までの毎月開催から隔月開催に変更して実施した。令和7年度の活動においては、基本的には同じような形で全体の部会を9月と3月の2回実施、事務局会議も隔月の予定だが、年度末には検討事項が多くなるので時間を延長したいと考えている。
 令和6年度のPDCAサイクル実施計画は概ね達成している。令和7年度の目標は、現在4つの小集団であるが、3つの小集団に整理縮小する。その中でも研修グループのがん相談員研修の負担が大きく、兵庫県の中でがん相談員研修というのを実施できる体制を作るのが大きな課題である。ピア育成推進グループについては、県や患者会と連携をとって活動体制を整備していく。そして、質評価グループが現状把握をして対策に活かしていくのだが、業務改善を受けて、部会、運営事務局の会議を削減しているため、1回の密度が大変濃くなっている。事務局会議が個々の話に終始してはいけないため、できるだけ事務局会議には管理的立場の人間に出席いただきたい。病院内の人員配置の問題もあるが、ある程度マネジメントの視点を持てる方の参加に切り替えていただくよう、各病院の協力をあおぎたい。

④「がん登録部会」関連
 令和6年度は、6月26日に部会を開催し、院内がん登録実務者ミーティングを年2回行った。1月にがん登録実務者ミーティングを開催した際に、2022年の「施設別・部位別院内がん登録数・治療数」の集計結果を提示し、現在、兵庫県がん診療連携協議会のホームページに公表している。令和7年度も6月にがん登録部会を開催予定である。また、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会のがん登録部会が5月28日にweb開催され参加した。院内がん登録関連本年の予定とQIデータ提出等に関する予定の報告があった。全国がん登録実務者研修会の開催については、9月20日から10月31日にかけて動画配信で実施をした。令和7年度のがん登録実務者ミーティングは、昨年同様講義形式を含めた2回を予定しており、都道府県のがん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会へも参加する。
 がん登録部会のPDCAサイクルは、「がん診療情報を収集・分析する体制整備」「がん登録実務の精度向上」「全国がん登録情報の予後情報還元申請」の3つを課題にあげ、収集分析はより患者等に役立つデータのホームページ掲載、実務の精度向上は講義含めた実務者ミーティングの開催や研修参加。予後情報還元申請に関してはセキュリティ対策整備が課題ですがこれに対して相談、支援を行い情報共有を図っていきたいと思っている。令和7年度もこの3つについて引き続き取り組みを進める。

⑤「緩和ケア部会」関連
 緩和ケア部会は、昨年度はWeb開催で部会を年4回実施している。小集団活動は5つに分かれており、部会運営に関しての会議ということで運営事務局会議を毎月開催した。令和6年度の緩和ケア研修会指導者の会は、令和7年2月9日に開催し、20名が参加した。企画責任者の先生方に集まっていただいて意見交換をしていただいた。令和6年度の緩和ケアフォローアップ研修会は、神戸市立医療センター中央市民病院企画のもと、Web開催で実施、14名が参加した。緩和ケア研修会受講後の皆さんのフォローアップという目的で研修会を開催している。第15回兵庫県緩和ケアチーム研修会は、加古川中央市民病院にご担当いただき、令和7年2月9日にWeb開催し、77名が参加した。緩和ケアチームピアレビューを令和6年10月13日に神戸市立西神戸医療センター、12月4日に県立はりま姫路総合医療センターを対象に実施した。症状緩和のための専門的治療体制に関する実態調査ということで、ペインクリニックの実施体制であるとか、緩和的な放射線治療、IVR(インターベンションナルラジオロジー)が各施設どのような治療体制になっているかの実態調査アンケートを行った。具体的なことは後の資料に添付しており、がん診療連携協議会ホームページでも公開している。令和6年12月6日に都道府県のがん診療連携拠点病の連絡協議会の緩和ケア部会に参加をした。
 令和7年度の計画については、もう少し業務の効率化を図るため、部会開催を年4回から年3回に縮小する。運営事務局会議に関しても、毎月開催から隔月開催に縮小する。小集団活動運営に関しては基本的には令和6年度の活動を継続して行う予定である。緩和ケア研修会(SG1)、フォローアップ研修会(SG2)、緩和ケアチーム研修会(SG3)、緩和ケアチームピアレビュー(SG4)、インターベンショナル治療(SG5)。令和6年度のPDCAサイクルは概ね達成している。令和7年度の目標については、(SG1)は課題が出尽くした感があるため、別途違う課題を見つけていきたい。

⑥地域連携部会関連
 がんパスの使用状況について令和6年度3月末時点におけるアンケート調査を行った。令和5年度の登録件数は、新規に1485件の利用があり累計14,339件になっている。内訳としては、乳がんが最も使われていて6657件。以下、5大がん以外に前立腺がん、子宮体がんが後から追加された。特に前立腺がんは1000件を超えている。各がんの地域連携パスの使いやすさも含め、ガイドライン等の変更に合わせて各ワーキンググループで見直しを進め修正をしている。また、昨年度3つの修正があって、前から課題であった胃がんのESDのパスは、拠点病院のフォローアップをほぼ年1回という形にしているので、以前よりだいぶ使いやすくなったと思う。肺がんに関しては、病期分類の取扱変更があり、それに合わせて改訂した。
 がん診療における地域連携の現況については、Webによる退院前カンファレンスが485件、遠隔診療は167件であった。昨今話題のガンゲノム診療に関しては、49施設中41施設から回答を得られて、実際実施しているのは、そのうちの半分の施設である。さらにその半分の20施設の中の15施設から治療につながった症例数が平均16%との回答があった。一般的には10%程度と言われているのでうまくいっている。
 がんパス利用の各施設で、臓器別の使用状況、連携パスの運用上の問題等、社会事情で改訂が必要なものもあると思うので、来年度も検討していきたい。がん連携全体に関しては、少なくとも遠隔診療あるいはがんパネルの状況に関して、引き続きアンケートにご協力願いたい。PDCAサイクルは昨年度は全て概ね達成、今年度も引き続き取り組みたい。

〇肝がん地域連携パスの改訂について

  肝がんパスに関しては、今までウイルス肝炎から肝硬変癌ということが多かったが、昨今は減少し、現在はアルコールとか脂肪肝が増えてきた。治療方法については、腹腔鏡に加えてロボット手術が加わり、局所の焼却療法に関してマイクロ波が追加された。また、全身薬物療法では免疫チェックポイント阻害剤の内服、静注がある。このような形で肝がんの地域連携パスに関しては、昨今の医療の進歩に合わせて文言を改正、改訂点の主たるものであると説明があった。

⇒ 肝がんパスは他のがんパスに比べるとあまり進んでいない。進まない理由が三つほどあって、1つ目は、肝がんというと、慢性肝炎とか肝硬変が原因としてあるが、今はウイルス性肝炎だけではなく脂肪肝がクローズアップされている。進行すると腹水、食道静脈瘤という問題が出てくるが、開業医、かかりつけ医師では対応が難しい。2つ目は、肝がんの検査は画像が全てであるが、一度の検査ですぐに確定診断がつくものもあれば、なかなか確定診断に至らないものもある。境界病変が非常に多いと基本的には3ヶ月ごとにCTかMRIの撮影、フォローが必要なため開業医での対応が難しい。3つ目は、肝がんも薬物療法として、免疫チェックポイント阻害剤とか分子標的薬の組み合わせが非常に多くなってきたが、かかりつけ医では副作用のフォローが非常に難しい。こういった事情で、連携を希望する医院、施設が圧倒的に少ない。地域の医療機関にとっても無理のない範囲で、何が何でも連携パスを使うという形ではなくてもいいのではと思う。(追加説明:議長)

⇒ 他に質問等なく、全会一致で承認された。

(5)がん生殖医療について (資料5/PDF: 187KB

  カウンセリング実施数は2024年1年間で女性40名と男性38名。その中で、女性は乳がん25例、白血病、血液疾患が8例、男性は精巣腫瘍が8例、白血病、リンパ腫等の血液疾患が16例という内訳になっている。兵庫県のネットワークとしては、厚生労働省から助成金が得られる認定施設は3施設。英ウイメンズクリニックは卵子凍結、精子凍結が多く、兵庫医科大学病院は卵巣凍結が多い。兵庫県統計としては、卵子凍結が22例、精子凍結が36例と多くを占める。このネットワーク設立後、2016年から、女性における妊孕性温存実施数が年間約40件前後で推移している。男性の妊孕性温存実施数は2021年からの統計で30~48件で推移している。ネットワークが設立してから約10年経つので、来年ぐらいにはまた利用率等算出して、妊娠率等を考察したいと考えている。

(6)がん患者医科歯科連携事業について (資料6/PDF: 146KB

  歯科口腔外科未設置病院へ近隣郡市区歯科医師会との連携の取り組みを推進。令和6年4月24日、全国共通がん医科歯科連携DVD講習会を開催。令和6年6月16日に口腔がん対策推進事業として、「一般歯科診療所における細胞診を用いた口腔がんスクリーニングとその実際―細胞診専門歯科医からGPに伝えたいこと―」をテーマにハンズオンセミナーを開催。令和6年9月29日に「口腔粘膜は我々の専門領域―迷っていませんか、この色と形?―」をテーマに講演会をWeb開催。令和7年度も引き続き啓蒙活動していく。

(7)小児がんの進捗状況について (資料7/PDF: 3,500KB

  小児がんの拠点病院連絡協議会の資料によると、新規の小児がんとして約3000例が毎年報告されている。第四期のがん対策推進基本計画においてその中枢に医療の提供体制の集約と均てん化、AYA世代のがん対策、ライフステージに応じた療養環境の支援を提案しており、環境整備を進めている。今回三期目の3年目に入り、今年度の業績が次の視点につながるということで、引き締めてやっていきたい。実際にこの事業が始まり10年が経過した。それまでは、国で百数十の施設に分かれて小児がんの診療が行われていたが、急速に集約が進み、兵庫県立こども病院では、それをサポートするために、小児血液がんの専門医を5名、それから日本血液学会の専門医10名を配置していただき診療にあたっている。事業全体では、当初は拠点病院で国内の小児がんの患者さんの多くをカバーするという計画があったが、実際には病床の問題等あり、実現困難ということで、現在は拠点病院と準拠点病院をカテゴリー1Aと指定して、全体で多くをカバーするという計画になっている。
 県内では県立こども病院とともに県立尼崎総合医療センターの小児血液・腫瘍内科の先生方、神戸大学医学部附属病院の小児科の先生方と共に県内のほとんどの小児がん患者の診療を担っている。地域によってはこういう拠点病院、準拠点病院が全くないという地域があり、事業全体で大きな問題となっている。我々ができることは、遠隔地域で、専門医が存在しない、拠点病院、準拠点病院がない地域の患者さんが困らないようにできるだけ窓口を広げている。人材育成についても、専門医が不在となっている施設がいくつもあるので、現在は香川大学などと連携して専門医の育成に努めている。また、特に力を入れている領域が免疫細胞療法で、遺伝子改変T細胞療法に参入し現在5例目を準備中である。難治性慢性GVHDに対する体外式フォトフェーシス(ECP)も導入。特にCARTについては、現在はリンパ腫、白血病、急性の白血病というのが対象になっているが、それ以外に急性骨髄性白血病や神経学習を、あるいは脳腫瘍といったような固形症に対しても治験が進んでいる。また、国外の治験に参加するためにクラウドファンディングをするというような患者さんもいるので、それをキャッチアップできるように施設としても頑張りたい。兵庫県立こども病院として、もう1つ大きなミッションは、隣接している神戸陽子線センターの先生方と協力しながら小児の陽子線治療についても力を入れており、全国から陽子線治療の患者さんを受け入れている。
 また、ゲノム医療に関しては、小児がんに関してはなかなかそれに対応するがんパネルが揃わないということが従来からあったが、FoundationOne® LiquidCDxを小児に適用を拡大、ゲノムプロファイリングシステムでGenMineTOPが小児がんに対しても2023年8月より保険適用、造血器主要遺伝子パネル検査「ヘムサイト」の製造販売承認ということでラインナップが充実してきた。検査ラグの解消に役立てたいということで戦略をたてている。小児がんに対する治験に関しては人材不足もあり、国立がんセンターで人材を育成して、各地域に人を戻していくというような流れが現在作られている。一方で、行政でも昨年来大きな動きがあり、これまでドラッグラグ解消のために医療上必要性が高い場合、承認薬適用検討会議等で使用できる範囲を広げた。要するに、海外で十分実績があるものについては条件付きで承認が可能となり、今後ドラッグラグの解消につながると期待される。小児がんは生存例が高いので、治療が終わった後に末期障害で苦労する患者さんが多く、全国でも6割の方が該当することが分かった。これらを踏まえて、治療が終了した患者さんの移行期についてがんサバイバーをどうやってケアするかという点に注目してフォローアップをしていきたい。
 最後に療養環境の整備についての報告であるが、文部科学省から高等学校段階についても、入院生徒に対しては教育保障が必要だという通知が出ており、これに対応するために兵庫県教育委員会の高等教育課の先生方と協力をしながら、教育支援が受けられるよう取り組みを進めている。また、小児の緩和ケアについても非常に注目が高く、必要に応じて施設からの相談も受けられる体制を整えており、小児緩和ケア診療加算も取れるようになってきた。緩和ケアの一環としてホスピタルファシリティドッグを配置するためにクラウドファンディングを5月に行うことが決定しているのでご支援を賜れたらと思う。

(8)その他

①兵庫県の希少がん対策について (資料8-1/PDF: 556KB
 希少がんとは年間の発生率が十万人あたり六例未満のもので、数は少ないがゆえに診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きいものとされている。種類も190種類あり、希少がん自体の数は少ないものの種類が多いために全てを足すとがん全体の15%から22%ということで、決して無視できない数字となっている。課題としては、病理診断が難しく、正確な診断、治療につなぐことができない、治療の開発が遅れているといった点があるが、一番重要なのは、医療関係者と患者双方において必要な情報が不足しているということが挙げられる。希少がん対策の現状としては、国の第4期がん対策推進基本計画においては、希少がん難治性がん対策の課題として中央機関を設置し、診断支援や専門施設の整備等を進めてきた。今後取り組むべき施策として、高度かつ専門的な医療へのアクセス向上のため拠点病院等の役割分担と連携体制の整備の推進ということが挙げられている。
 兵庫県のがん対策推進計画においては、医療体制の中で質の高いがん医療を受けられる体制構築の確保ということが挙げられている。現在整備されている希少がんセンター事業とネットワークについて、国立がん研究センターに希少がんセンターが開設され、希少がんの情報提供、それから相談支援、希少がんホットラインが開設されている。現在、近畿地方では大阪国際がんセンターが中核拠点病院となっている。近畿地方希少がんネットワークが昨年の8月に開設され、希少がんに関する情報の発信、それから相談支援センター体制の確立をめざし兵庫県においても希少がん対策を行っていこうということで今回ワーキンググループの設置を提案した。国指定がん診療連携拠点病院に加え、国指定がん診療病院の県立丹波医療センターと赤穂市民病院、国指定小児がん拠点病院の県立こども病院を加え活動を行う。県内の希少がん治療が可能な施設、治療実績といった情報を各病院のがん相談支援センターで共有する。令和7年2月開催の幹事会でご承認いただいたのは、そのような対策を協議するワーキンググループを設置するということである。

②姫路市遺伝性症候群の検査等助成事業について (資料8-2/PDF: 2,200KB
 姫路市では令和7年度より新規事業として、遺伝性腫瘍症候群に係る検査等の助成事業の制度を作った。対象は令和7年4月1日以降に受けた遺伝学的検査と遺伝カウンセリングである。助成内容は、遺伝学的検査と遺伝カウンセリング(2回)。助成対象者は、遺伝性腫瘍症候群発症者の血縁者、父母・子・兄弟姉妹で、受診時及び申請時に18歳以上の姫路市民の方、遺伝性腫瘍症候群を発症していない方である。助成額は、遺伝カウンセリング2回15,000円を上限、遺伝学的検査は50,000円を上限としている。上限額に満たない場合は、実際にかかった金額を助成して、上限額を超えた分については自己負担になる。補助率については支払金額の10分の7である。必要書類は申請書、検査の領収書・明細書、戸籍謄本等に加え、医療機関に記入いただく証明書がある。証明書については、臨床遺伝専門医あるいは遺伝性腫瘍専門医の先生方に記入をお願いしたいとしている。この事業については姫路市のホームページにも記載をしているのでご参照いただきたい。

③肝炎友の会からの報告 (資料8-3/PDF: 221KB
 1995年から2023年まで約20年間の死亡率(75歳年齢調整死亡率)の統計を見ると、兵庫県は47都道府県の中で1995年の43位から2023年には16位まで前進しており、医療内容、医療体制が整ってきていることを表している。特に、肝臓がんと肺がんの改善効果が高い。食道がんと膀胱がんについては改善が必要と考える。がん検診の受診率を見ると、兵庫県は2022年に43位、2023年に38位とあまり高くない。がん予防の最初の窓口が検診であるため、そこに力をいれる必要がある。がん検診については、がん教育といったものが必要になると思う。また、治療体制、治療内容、そして緩和ケアも含めたがん患者のフォロー、こういったことが重要となる。

ページの先頭へ戻る

※PDF 形式のファイルがご覧いただけない場合は、下に表示されているバナーをクリックして最新版の Adobe Reader(無償) をインストールして下さい。
Adobe Reader ダウンロードページへ

  • がん診療連携拠点病院
  • 兵庫県がん地域連携パス
  • 兵庫県緩和ケア研修会
  • 兵庫県がん対策推進計画
  • 兵庫県がん登録情報
  • がん相談支援センター
  • 関連情報リンク